Round Table(3/24) |
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弊社も共催という形でお手伝いさせて頂いてる「TREES Work Session」が、先日3月24日の「Round Table」を皮切りにスタートし、4月に入ってからは「TREES Lab」が広島の各所を移動しながら活動を続けています。詳しい活動趣旨や現在の状況についてはHPやFacebookページを参考にしていただくとして、今日はこれまでの行ってきた「Round Table」と「TREES Lab」の様子と、そこから見えてきた活動の可能性についてレポートしたいと思います。
これまでの経緯
今回の活動の母体となっている「TREES」は、建築やデザインを学ぶ学生・社会人による議論の場を生み出すことを目的に、2012年より定期的なイベントを行ってきました。奇しくも弊社設計士である私、杉田宗が昨年3月のイベントで発表する機会を与えて頂き、その後も広島に関わりのある若手建築家を中心に20名近くのゲストが登壇してきました。このイベントでの人的交流も盛んになり、そこからのコラボレーションなど、様々な波及効果も生まれつつあります。事実、今回弊社と同じく共催として参加しているSmall house design lab.の田中健二さんは私の次の「TREES」に登壇され、その後弊社と協働で進めてきたプロジェクトが現在施工中です。「TREES Work Session」はそういう環境の中から必然的に生まれてきたプロジェクトであると考えています。「TREES Work Session」ではこれまでTREESに登壇した建築家やデザイナーが中心になり、宮島口のグラウンドデザインを募る「宮島口まちづくり国際コンペ」に向けてデザイン活動を行うプロジェクトです。これまで、この様なデザインコンペは建築家や設計事務所の競争の場とされてきましたが、まちづくりに向き合う場だと捉え直し、若い建築家やデザイナーが集まる協創の場を作る試みです。集まって一つの案を絞り出すというのではなく、プロポーザルを練る段階でそれぞれの案を批評しあうことで、より良い案を地元から数多く出すという目標があります。また敷地模型や敷地に関するリサーチ等、共有可能な部分は積極的に協働し、これらのプロセスをできる限り表に出していくことで、一般の人たちがデザインプロセスに触れ、まちづくりに有効な様々な意見やアイデアが集まることを目指しています。
プロポーザルをまとめる建築家やデザイナーに対しては、異業種の混じったデザインチームを作って参加することを勧めています。これはまちづくりを考える多角的な視野をもってコンペに臨んでもらいたいという願いと、こういう機会だからこそ新たな横の繋がりを作る機会としてほしいという意図があります。また、参加するデザインチームに対し、以下のルールを設定しています。
- 参加者全員が広く、様々な意見や情報を集め共有すること
- 参加者の中のアイデアは転用可。しかし必ず元のアイデアよりも良くすること
- アイデアやデザインに対する批判可。しかし必ずそこからより発展する批判をすること
- すべての活動が記録され、公開される。それぞれの活動も積極的に発信すること
- 受賞した場合、賞金の25%を今回のイベントや今後のTREESの活動に活かすこと
これらのルールの下、様々な業種のプロフェッショナルが入り混じり、意見を交換しあう「Round Table(3/24)」、デザインチームを構成して1日間のデザインシャレットを行う「Charette(5/5)」、最終的な発表の場になる「Presentation(5/30)」の3つのイベントを立て、様々なプロポーザルが作られていく枠組みを作りました。また、協働の場として「TREES Lab」を設け、参加者による協働作業を行う環境を整えることで、共有できる部分の量と質を向上させようと考えています。
TREES Work Sessionの流れ |
Round Table
冒頭にも書いたように本プロジェクトのキックオフミーティングとして3月24日にSmall house design lab.のスペースをお借りして「Round Table」を行いました。当日は、- TREES Work Sessionの概要説明(杉田)
- 宮島口について基本的な説明(市村)
- 座談会
- 宮島口の歴史やまちづくりの現状に関する説明(高田)
国際大学4年生の市村くんは宮島口を過去・現在・未来に分け、時間軸の中でのまちの移り変わりを説明してくれました。電車や船の発達により地域が発展してきた姿を見ると、現在同様、交通インフラは長年重要な要素であった事がわかります。現在計画されている開発を見ても、やはり議論の中心はJRやフェリーまたは自動車をどの様に扱うのか?というところにある様に思われます。その交通インフラを使い宮島口を訪れる人の数には驚かされました。多くの観光客を呼び込む宮島に向かう大半が、必ずこの宮島口を通るということは、非常に恵まれた現実だと受け取れると思います。
アーキウォーク広島代表の高田さんは、今回のコンペに取り組む上で重要だと思われる 三つのテーマ、「エリアの形成史」、「プレイスメイキング」、「公民連携」 を中心にお話しをして頂きました。江戸時代の宮島は現在我々が考えている姿とは随分と違っていた様で、長い時間の中で、観光地が神格化されるということは、宮島にとどまらず、様々な所にあるのではないかと考えさせられました。また、富山市グランドプラザやニューヨークのブライアントパーク等を例に挙げながら都市の中に作られる場と、それに付随して生まれる様々な活動について紹介して頂きました。既存のやり方にとらわれず、新しいシステムを作ることで、バラバラになっている課題をうまくつなげて解決していくことに繋がるとおもいました。しかしこのシステムを作るというところが非常に難しい所であり、今後は行政と民間が協力し、市民にとってのニーズや持続可能性を中心置いた「生きた空間」を作る必要があると説明されました。まさに現在進行形の紫波町オガールやそこで導入されているBIDの示す可能性は今回のコンペでも重要になると思いました。
当日発表をしてくれた市村くんも本イベントのレポートを書いてくれているので、合わせて読んで下さい。
Round Tableから見えてきたこと
二つのプレゼンテーションの間には参加者による座談会を行いました。会場には40名余りの方々に来ていただき、座談会では半数以上の方々に発言していただけました。もっとも印象的だったことは、そこにいた参加者の業種の多様さです。TREESに関わってきた建築家や様々なデザイナー、物販に関わる人から理髪店亭主まで、実に様々な視点から様々な意見が出ました。観光客の目線に立ち、どういった町にするべきなのか?というビジョンの話から、どういった情報を的確に伝える事ができるのか?といった具体的な議論もされました。また、住民にとっても住みやすい町としながら、観光客との繋がりが生まれる場の重要性や、近隣の町の人たちも頻繁に訪れて楽しめる新しい側面についても話題が広がりました。イベント終了後のパーティーで、議論が離散的に継続していた様子を見ると、まちづくり」であるが故、様々な人が同じプラットフォームの上で議論できるのではないかと感じました。コンペの段階で、これだけの人たちが様々な議論をし、それを継続させることができるのなら、新しい「まちづくり」の形が示せるのではないかと考えています。まちづくりには明確なビジョンとそれを実行する様々な人間が必要になります。考える側、作る側としては、様々な議論を重ねて、デザインやシステムを通して課題を解決していくチームを作ることは実現にむけて不可欠です。その種となるような人たちが、このイベントに集まっていたと感じています。
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TREES Work Session - Round Table(3.24) from Yasumasa Oda on Vimeo.
TREES Lab
Round Tableから始まった活動を持続的に発展させていく為、4月初旬には参加者によるデザインプロセスの拠点、TREES Labを始めています。そこで参加者間や一般市民との継続的な議論を誘発させ、デザインを進める上で重要となる、敷地模型や3Dデータの制作、敷地に関する様々な情報の収集作業を参加者全員が協働し、それらを共有することで、より大きな力でコンペに臨む体制を整えるのが目的です。TREES Labでの主な協働作業は大きく3つに分けられます。- コンペ期間中共有する敷地模型の制作(4月上旬)敷地全体をカバーする1/1000模型と、駅前通りに重点を置いた1/300模型を制作。各自での検討用に、模型のイラレデータ、ならびに簡単な3D敷地データをHPで公開。
- 敷地に関するリサーチ(4月下旬)宮島口に関するリサーチトピックをFacebook上で募り、それに沿ったフィールドワークを学生中心に行う。調査結果はMiyajimaguchi Mapping Projectのフォーマットでビジュアル化する。
- 各デザインチームによるプロポーザルのデブロップメント(5月)定期的なデザインチームの打ち合わせなど、積極的にTREES Labを活用し、デザインチーム内やそれ以外との幅広いコミュニケーションを誘発させる。この様なコミュニケーションが、多角的な提案につながっていくことを目指す。
- 4月5日(日) さしものかぐたかはし 敷地模型制作
- 4月11日(土) 傘のフクマ 敷地模型制作
- 4月15日(水) READAN DEAT 敷地模型制作
- 4月18日(土)/19日(日) 宮島口周辺 敷地リサーチ
- 4月26日(日) 本と自由 デザインシャレットへ向けての準備
- 5月6日(水)~29日(金) 現在交渉中 プロポーザルのデブロップメント
TREES Labの意義
4月前半のTREES Labを振り返ると、非常に有意義な活動になっていると感じています。この期間中は敷地模型制作を中心に進めて来ましたが、店舗の一部をお借りして作業させてもらうことで、実に多くの人たちといろいろなお話しをする機会に恵まれました。宮島や宮島口に対する考えを話してくれる人、建築家の仕事について興味を持たれる人、模型作りに興味を持たれる人など、想像以上に周りの反応が大きかったと感じています。協働作業をしていた建築家や学生などは、当初日頃とは全く違う環境での作業に戸惑う場面もありましたが、模型が完成に近づく達成感と、いろいろな方から声をかけられてコミュニケーションを持つことに一種の高揚感を感じていたように思います。私自身、感じた事のない気分が一晩中続いていました。この様な事が何かをデザインする上で本当に必要なのか?という疑問もあるかもしれません。しかし、我々が取り組もうとしているこれからの「まちづくり」にはこういった場が不可欠なのではないかと感じています。コンペで設計者が決定した後、市民参加型のワークショップなどを行うことは一般的にはなっています。しかし宮島口の様に、様々な人に向けてのまちづくりになる場合、住民の意見からだけでは洗い出せない課題が数多くあります。こういった課題を様々な分野の人間と協力して見つけ出し、新しいシステムを提案しながら、課題を繋げて解決していく方法を提案することにこそ、建築家やデザイナーが「まちづくり」に関わる意義があるのではないかと考えています。今後の活動を経て、TREES Work Sessionに参加しているデザインチームからどのような提案がでてくるのか、非常に楽しみです。
TREES Lab(4/5) |
TREES Lab(4/9) |
TREES Lab(4/11) |
TREES Lab(4/15) |
TREES Lab@FUKUMA(4.11) from Yasumasa Oda on Vimeo.